朱に交われば赤くなる3

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 九栗さんが珍しく語気を荒げて拳を握る。 「これで同点かあ……時間もあんまりないし……」  不安げに零すカナちゃんに、九栗さんが「あ」と声を上げた。 「女子の第一試合もう終わったみたい。次の次だから、そろそろ戻った方がいいかも」 「ほんとだ。行こうか」  頷くカナちゃんに、あかりちゃんも渋々といった様子で体を動かす。  コートでは一年生の子がドリブルで上手くボールを運んでいる。  それをしなやかな動きで遮ったのは、狼谷くんだった。 「羊?」  ボールが彼の手に吸い付く。物凄いスピードで駆けているはずなのに、重々しい音が聞こえない。  狼谷くんが立ち止まった。ゴールにはまだ少し遠い。 「玄! こっち!」  津山くんが声を張り上げる。  狼谷くんの目が動いて、タイマーを捉えたのが分かった。  ――迷ってるんだ。  今パスを出しても、時間的にシュートまで持ち込めるか怪しい。  でも彼のいるところからシュートを打つのはハードルが高い。 『俺のこと、ちゃんと見てくれる?』  うん。ちゃんと、見るよ。……見てるよ。 「狼谷くん! シュート――――!」
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