朱に交われば赤くなる3

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 どっ、と心臓が一際大きく波打った。  女の子の甘えるような声。  彼女は確かにその名前を呼んで、応えるのは優しい「彼」の言葉だった。 「なに……嫌だったんじゃないの?」  間違いない。狼谷くんだ。  さっきまで走り回って、汗を流していた狼谷くんだ。  彼が女の子とそういうことをしているのは勿論分かっているし、それが当たり前だと思っていた。  ただ、こうして直接聞いてしまうのとではやはり訳が違う。 「興奮してるんだ? 誰かに、聞かれるかもしれないって?」 「ばかっ、違う……」  全く関係ない自分まで恥ずかしくて堪らない。  生々しくて、酷くて、顔は熱いのに背筋は凍ったようだ。  狼谷くんはこういうことを、しているんだ。  侮蔑ではない。再認識だ。  多分、私の理解がまだ十分じゃなかっただけ。 「玄ー! そろそろ切り上げろ! 昼飯食いに行くぞー!」  突然、ドアが勢い良く開いた。  心臓が口から出るんじゃないかと思うほど驚いて、肩が派手に跳ねる。  津山くんの呼び掛けに、奥から布の擦れる音がした。 「岬、声でかい。普通のボリュームで聞こえ……」
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