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津山くんは朗らかに告げると、今度こそ私を引っ張って保健室を後にした。
「あ、あの、津山くん……」
「いやー、びっくりしたでしょ! 災難だったね!」
廊下を歩きながら、彼はおちゃらけた様子で肩をすくめる。
右手は相変わらず繋がれたままで、触れた部分が酷く熱かった。
「あいつね、いつもあんなんだから白さんも早く忘れた方がいいよ。多分気にしてないから大丈夫」
私があの現場を見てしまったことを気にしていると思ったのか、津山くんはそう言い放つ。
「だから学校はやめとけって言ってんのに……強情だわ」
あっけらかんとした物言いに、私もようやく落ち着いてきた。
驚きはしたけれど、あれが彼の日常というわけだし、それを体感しただけだ。
空き教室に入ると、津山くんは私を座らせて、その向かいに自分も腰を下ろした。
「白さん、ティッシュ替えようか」
彼が言いつつ私の鼻に手を伸ばすので、思わず仰け反る。
「いやいやいや自分でやるから大丈夫だよ!?」
「俺、保健委員だから安心して!」
「そういう問題じゃなくて……!」
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