569人が本棚に入れています
本棚に追加
彼が保冷剤を持っているのを思い出して、ああ、と納得する。
「でも、さっき自分でやってって……」
「あはは。それはそれ、これはこれ」
津山くんはそう言って、手を伸ばしてくる。
「白さんさ」
「うん?」
「玄と友達って、前に言ってたよね」
頷いて、私は彼の言葉の続きを待った。
「あんまり玄の言うこと鵜呑みにしない方がいいよ。ほら、白さん真面目だから」
津山くんが笑う。何の他意もなく。
「知ってるとは思うけど、あいつ女関係だらしないし、結構ゲスいし?」
「……うん」
「もし、万が一、白さんが玄を――ってなったら、辛いのは白さんだと思うから」
冗談のようなトーンだけれど、きっと冗談ではない。
これは多分、彼なりの心配なんだろうなと、そう思った。
「だから、深入りしない方がいいよ」
――そして、忠告でもある。
「岬」
津山くんの後ろでドアが開いた。
「……思ったより早かったね、玄」
最初のコメントを投稿しよう!