46人が本棚に入れています
本棚に追加
3
息子が冬休みに入って三日が経った。
最近は特にやることもなく、家で筋トレを始めた。
理由はお腹についた脂肪を見て少し悲しくなったからだ。
私も四十歳を過ぎたおばさん。
顔の手入れが頑張っているものの、体までは手入れしていなかった。
そういうわけで、最近になって筋トレを始めたのだ。
成果はまだ出てないが、今日からはジムに通う。
なかなか楽しみである。
昼になり、軽い化粧を済ませて着替えを持ってジムへ。
ジムはとにかく値段の安い場所を選んだ。
一人息子だが、大学進学も払わないといけないと思うので、そこまで無駄遣いは出来ない。
「いらっしゃいませ。初めてですよね?」
「はい。よろしくお願いします」
ぴちぴちのタンクトップ姿の男性店員に色々とジムについて聞き終えると、まずは筋トレ用の服装に着替える。
ジムには筋トレ器具がたくさん。
ほとんどが男性で女性の姿は見当たらない。
若い子も多く、汗を流しながら筋トレに励んでいる。
私はとにかく一通り筋トレ器具を知ろうと今日は全て試してみることにした。
「あ、お、お母さんじゃないですか」
「えっと、カズキのお友達の……」
「ユウトです」
もちろん名前は知っていた。
けど、何となく知らないフリをした。
―ーあっ……。
何かがこみ上げてきたが我慢だ。
私は笑顔で会話を続ける。
「そうそうユウト君ね。久しぶり」
「お久しぶりです。お母さんも筋トレですか?」
「そうよ。でも、今日が初めてなんだけどね」
「そうなんですか。じゃあ、僕が一通り教えますよ」
「え、そんなのいいわよ。迷惑でしょ?」
「いえいえ、そんなことないです。それに……」
少し悪そうな笑みを浮かべるユウト君。
私はそれに首を傾げる。
「お母さんにはカズキとカズキの彼女であるミナミについて話したいですし」
「な、何で?」
「いやぁ~、カズキのやつ、彼女が出来てから遊んでくれなくて……。どうせお母さんには言ってないと思うし、少し情報提供しておこうかと。息子の恋愛事情に興味あるでしょ?」
「ユウト君は意外と嫉妬深いのかな?」
「なっ、そういうのじゃないですよ。ただカズキだけ彼女が出来てせこいというか何と言うか……。とにかく筋トレしましょ!」
私はユウト君のその言葉にフフッとだけ軽く笑い、カズキと一緒に筋トレを始めた。
最初のコメントを投稿しよう!