boy's side

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 俺だっていつまでも若いわけじゃないし、それはこれから出会っていく女たちだってそうなわけだ。時は逆転しないし、停止もしない。俺たちは毎日毎時毎分毎秒、すべての生き物に平等に訪れるゼロアワーに向かって進んでいるんだから。そこに至るまでの間、顔は老け、脳は衰え、髪は減り、おっぱいが垂れ下がっていく。そう思うと、二十代前半のこの時間ってめっちゃ大切だ。何事も切り替え早くいかないと。相手にも悪いし。  というわけで、侑里にかくれて日々マッチングアプリをのぞいて、気になった女がいたらメッセージを投げてみて……っていうのをここ一ヶ月くらい、せっせとやっていた。こういうビジネスってよく考えるよな。一部の人間を除いて、こういう類の人付き合いって明らかに需要と供給が一致していない。一人の女に群がる男の数たるやって感じだ。俺は別にそこまで血眼ではないし、単純に侑里とは同じ会社の中で付き合っているから「次」はさすがにリアルで見つけにくいっていうだけだけど、世の中には実生活でのコミュニティの中で異性と付き合いが持てない男なんて腐るほどいるだろうからさ。まあ少し難儀したし、あんまりしたくなかった課金もしてしまったけど、最近ちょっとイイ感じの女の子を見つけたから、結果よければすべてよしってやつだろう。  その子は同年代とか妹とかっていうより、お姉さんキャラって感じで、それもそれで俺は付き合った経験がない。俺はわりと手のひらで転がすほうが好きだったけど、逆に転がされるのも悪くないかなあなんて思いながらメッセージを送り合ったり、侑里がちょうどいないタイミングで通話してみたりして思ったものだ。落ち着いてはいるけど、その落ち着きは侑里のようなおとなしさや物静かなところからくるものじゃなくて、大人のオンナの余裕があるっていうか。ああこういうのも自分に刺さるんだなあ、なんてしみじみ思ってみたりした。  当然に、俺がそんなやりとりだけで満足できるわけがなくて、なんとかして会える約束をとりつけた。その約束の日が、今日なのだ。今日の侑里はなかなかに粘り強かったが、最終的には遊びに行くことを納得したようだった。もっとも、遊ぶ相手は俺の高校時代の同級生の男たちってことになっているが。  これがもしもうまくいっちゃったりなんかしたら、どうしようかな。こと、男女の付き合いって始めるより終わらせることの方がだるいんだよな。大喧嘩して別れるとかなら別だけど、怒りたくもないのに怒るの疲れるから、あんまりやりたくない。事務的に、さっぱりと終われたらいいのに。退職代行みたいに、破局代行をしてくれるサービスがあればいいのになあ。  ちょっと待って、これって最先端? 俺がやるか?  そんな風にアホなことを考えながら、待ち合わせ場所に着いてスマホを見たら、待ち合わせ時間まであと一〇分あった。我ながら浮足立ちすぎだ。でもこんな気持ちは久々だった。  恋人がいるはずなのに、なんでこんなに恋をしたがっているのだろう。生きるってうまくいかないもんだよ、全く。  まだ何も終わってもいないのに、早くも終えることを考えながら、俺はただ、時が経つのを待った。                 >>>>girl's side
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