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離婚警報解除の条件
何だって?! 離婚警報!? 離婚?!
突然やってきたピンチに思考が追い付かない。
これが世に言う、熟年離婚というやつなのか。
それにしても何故だ!?
俺は何もしていないじゃないか!
義昭には全く心当たりがなかった。
慌てて離婚警報の紙を手に取ると、下にはちゃっかり離婚届まで置いてある。しかも幸枝の部分は記入済みだ。
唯一の救いはまだ印鑑が押されていないことだった。代わりに付箋紙が貼ってあって、何か書いてある。
なになに?
くそ、老眼でよく見えない。
「幸枝、老眼鏡とってくれ」
……いつもの癖で呼んでしまったが、返事があるはずもない。幸枝はいないのだ。
ああ、いまいましい。
義昭はとりあえず老眼鏡を探して動き回る。動いていた方が気持ちは落ち着く。
やっと電話機の横のペン立てに老眼鏡を発見した。これで付箋紙が読める。
「警報が解除されない場合は即座に捺印します」
くそ、どうしたら離婚警報が解除されるというんだ。
よく見ると、離婚届の下にはもう一枚A4サイズの紙があって、ご丁寧にパソコンで何やら打ち込んであった。
「離婚警報解除の条件」
幸枝が「ひろみさんにパソコンを習ってくるから」と言って息子の嫁のところに行っていたのは、これを作るためだったのか……
その離婚警報解除の条件というのは、以下のものだった。
「離婚警報解除の条件」
次の任務をこなすこと。
1、素麺を作る(私と同じように)
※調理時間を測ること。
※写真に撮ること。
2、週末まで一人で暮らす
※添付写真の通り、現状を維持すること。
3、土曜日、孫たちを呼び、晩御飯を振る舞う(出前禁止)
4、離婚警報発令理由を考える
1の素麺なんて茹でるだけだ。
2の「一人で暮らす」は、いつも通り過ごせば問題ないだろう。また丁寧に写真まで添付して……キッチンと、リビングダイニング、それから洗面所の写真だ。
3が難しそうだが、うん、やればできないこともないか。
4は全くわからないが……まあ、やってみるしかない。
こうして離婚警報解除に向けて、義昭の任務をこなす日々が始まったのであった。
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