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王道転校生、襲来。
「俺の名前は天宮海音。よろしくお願いします」
少年が一人教室に入ってくる。今は五月。こんな時期の転校生は珍しいのでクラス全員が注目して彼のことを見ていた。
その彼はとても変であった。
肩にかけているスクールバックには一般的にアフロと称されるであろうかつらと瓶底かと思うほどの分厚い眼鏡が入っていたからだ。どう考えてもおかしい。そんなもの転入してくる学校に持ってくるものじゃないし、ましてや転入初日にそんなにふざけることをしないだろう。
「チビとか言ったらそいつのことぶっ飛ばしてやるから覚悟しろよ」
冗談というように軽々しくぶっ飛ばすといった少年はそんな風に見られているなど全く知らずに担任に指定された席に着席し、教科書とかを取り出す。
誰もが女子と見間違えるような容姿で薄茶色の髪。美しく白い肌。そんな少年の口から発せられたのは世間一般にはイケボと称されるような美しい低音でぶっ飛ばすという暴言。教室の生徒はそれに混乱し、何も言葉を発せていなかったのだ。
「ったく。いつまで海音に見とれてやがるんだ。さっさと次の授業の準備しろよ」
担任のその言葉でようやく教室にに音が戻る。誰もが不思議な転校生のことを気にしながら一時限目の準備をし始める。
ここは創緑学園。
いわゆる王道BL学園である。
ホテルと見間違うほどの大きな寮があり、新入生歓迎会には鬼ごっこ。その景品はもちろんのこと捕まえた相手との一日遊園地デート券。
そして生徒会は教師より権力を持ち、会長は俺様、副会長は腹黒、会計はチャラ男、書記は無口わんこ、庶務は双子である。
また、同等の権力を持つ風紀委員会もある。委員長は不良、副委員長は堅物等々。
生徒すら完璧なる王道だ。
これはそんな学園で起こる物語。
誰もが認める美形の転入生が挑む王道(?)ストーリーだ。
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