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「なんで眼鏡とかつらをしなかったんだ!」
「いや、俺の身を案じてるなら普通いじめられるようなことはしないだろ⁉」
「いいや! お前は綺麗でそして可愛い! そんなお前をこんな男たちの空間に放り込んだらお前が男に取られてしまうだろう⁉ さっきも副会長に貴方の甥さんはとてもいい方ですねって言われたじゃないか!」
「別にいいだろう⁉ それとこれとは完全に話が別じゃないか! そんなこと言ってたら俺には友達すらできねぇよ⁉」
「眼鏡とかつらは乱雑にカバンに入れられてるし⁉」
「そこかよ!」
遥に連れてこられた理事長室では、喧嘩が勃発していた。理事長的には変な虫によられそうな海音の容姿を隠してその心配を皆無にしたいようだが、海音は生粋の高校生。そんな容姿ではいじめられるとわかっていた。そのため反発をしているようだ。
「とりあえず、俺はこんなものつけないからな!」
そのまま海音はワーワー叫ぶ理事長を中に放っておき、部屋から退出する。そしてそのまま歩き出すが五歩ほど歩いてぴたりと止まる。
「そういえば俺、教室への行き方知らねぇじゃん」
「何勝手に歩き出してんだよ。俺が案内してやろうってのに」
「え、チャラ……なんでもありません。派手な格好ですね。似合ってますよ」
そんな海音に対し、後ろから声をかけたのはまるでホストのような容姿の男。思わず口からチャラいという言葉を発しそうになったもののこらえた海音は笑顔でその男に向かって言葉を返した。
「チャラいとはなんだ」
「思ったことを口にしたまでです」
「おい」
「すみません。それよりお名前を」
男は海音にずっと見つめられていたからか、とりあえず目をそらして恥ずかしそうに言った。
「……ん。まあ、俺は皆倉泰司。お前の担任。一年S組担当だ。ついでにお前の名前も教えろ」
「俺は天宮海音です。海音って呼んでください」
「……ん。おう」
泰司は面食いだった。こんな可愛らしい容姿の子に見つめられては心臓が持たないようだ。見た目はホストのようなのに中身は初心らしい。
「早く教室行きましょうよ。このままだと理事長が部屋から出てきかねませんし」
泰司は海音に目を合わせないようにうつむいていた。そのため、海音がのぞき込むようにして下から泰司を見ると慌てたようにまた目をそらして言う。
「……っ、あ、ああ。わかってる。さっさと行くぞ」
その返事をした勢いのまま、泰司は歩き出し、それを海音は急いで追っていった。
やはり、泰司は面食いだった。
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