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「おいおい泣いてんじゃねぇかねーちゃんよぉ」
「男に囲まれてブルっちまったか?腰に下げてるモンは飾りかよ」
暗い森の中で私は五人の男に囲まれていた。
誰も彼もが薄汚く不揃いな鎧を身に着けている。手にはあまり手入れされていない剣、斧、槍、短剣。ひとりは素手で弓持ちは居ない。
少し痩せ気味だが精悍な身体つきと下卑た笑みの男たちが取り囲めば、ひとりの女を震え上がらせるには十分だろう。
少なくとも今までの彼らの人生はそうだった。
けれども、私が涙を流しているのはそれとはなんの関係もない。
「外套はボロいが革鎧は小綺麗なもんだ。駆け出しの素人じゃねえのか?」
私から見て一番奥の男が品定めして周りに伝える。この五人の中では彼がリーダーだ。
「なあねーちゃんよぉ。俺たち女に困ってんだ実は」
「へへ、だからさ、痛いより気持ちいい方がいいだろ?あんたもさ」
私は大きくため息を吐いて剣を抜いた。
手のひらに少し足りない程度の短い柄、それと同じ長さの十字の鍔を挟んでやはり同じ長さの鞘口を持つ二振りの細身剣。
「おいおいなんだそのヘンテコな剣はよ。柄短過ぎんだろ」
「ひゃはははは、それどうやって握るんだ?なあ?」
いつものことだ。誰もがそうやって笑う。もっともことが済む頃には誰も笑えなくなっているので気したことはあまりないのだけれど。
「心配しなくてもすぐにわかるわ、アーロン」
目の前の、短剣を持っていた男に声をかける。男は凍り付いたように目を見開き、それ以外の四人は怪訝そうに首を傾げた。
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