上書き

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いよいよ引っ越しの日、彼は私より先に新居に荷物を運び入れていた。私の荷物が今日届く。 私が着いた時には彼の荷物が綺麗に収まっていた。あまりの綺麗さにビックリして 「凄い!こんなにちゃんと整理して」 彼はニコニコと笑いながら 「うん、さっきまで母親がいてやってくれていた。これが最後だって寂しそうだったよ」 私は複雑な気持ちになった。数日前、顔合わせはしていた。その時に何も言わずに来て息子の荷物を片付けて、それを喜んでいる彼にも疑問を持たずにはいられなかった。 「お義母さんが来たならお会いしたかったな」 と少し抵抗気味に彼に言ったが、深くは考えていないみたいだ。 私の条件にマザコンは不可と入れていなかった事を思い出した。でも、これが最後となら大丈夫だろうと、気にしない様にした。 「明日はいよいよ区役所だね」彼が楽しげに言っている。引っ越したら早々に籍を入れて、結婚式は落ち着いてから身内でと、顔合わせの時に決まった。その時は私の両親もホッとしたのか目にうっすら涙を溜めていた。 「ねえ麗、分担決めたんだ、見てくれる?」 「えっ?一人で決めたの?一緒に決めるんだと思ってた」 「原案があった方がいいでしょ?麗の希望を優先にするよ」 食事を作るのは私、片付けるのは彼…あっそ! 整理整頓は彼、掃除は私…えっ? ゴミを纏めるのは彼、出すのは私…はっ? 洗濯は、その他は……なに? 私はその内容に幾つか納得がいかない事があったので分担についてはペンディングにした。
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