悲ロイン、玉尾ヒロエ

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 白球の弾ける音が、何度となく体育館に響き渡る。  もうかれこれ一時間近く、コーチから放たれた白球を私は必死に打ち返し続けている。  息は絶え絶え。体はアザだらけ。結っていたポニーテールは乱れ、私の動きは次第に鈍くなる。 「どうした玉尾! そんなんではインターハイで優勝などできんぞ!」  そう。この志那津(しなづ)高校女子バレーボール部の目標はインターハイ優勝。それを実現させるため今日まで苦しくて辛い練習に耐えてきた。  この程度の特訓で弱音を吐いてられない。 頑張るのよ、ヒロエ。  だけど、涙が出ちゃう……。  部員、私ひとりなんだもん……。
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