悲ロイン、玉尾ヒロエ

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 バレーボールは六人制。当然ひとりでは大会どころか練習試合も組めやしない。  以前までは部員はそれなりにいた。でもこの轟々(ごうごう)先生がコーチになった途端、練習の厳しさに耐えかねみんな辞めていった。  初めは私もみんなと一緒に辞めようと思った。でもできなかった。なぜなら私からバレーボールを取ったら何も残らない。私にとってバレーボールは青春そのものだから。  それに、理由はもうひとつある。 『ヒロエ君、頑張ってくれたまえ。キミならバレーボール界に燦々(さんさん)と輝く星になれる。僕が保証するよ』  幼なじみのマモル君に期待されている以上、私はバレーを続けるしかないの。  例え今試合ができなくとも来年……ううん、大学生や社会人になったらきっとできる。泣き言は言わずその日まで己を鍛えるのよ、ヒロエ!  この時、私は思ってもみなかった。  は、そう遠くない未来にやってくるのだと。
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