■相原編・後日談1:誕生日プレゼント

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 土曜日ということもあって、今日は出かけようと話していた。行き先は考えておくと言われたから、相原にまかせっぱなしだ。昨日聞いた時だってはぐらかされて終わっている。 (や、やばい……あれに合う靴もバッグもないですけどっ……)  相原の部屋で暮らすようになってから、沙和は必要な荷物はこちらへと運んである。けれど結婚式などフォーマルな場所へ赴く時の物は全てもともとの部屋に置きっ放しだ。一旦自分の部屋に戻ってもいいだろうか。 (あのワンピース着て、スニーカー履いて電車乗るの、嫌だぁぁぁ!!)  相原と正式に付き合いだして数ヶ月。  なんとなく相手のことを知っている気になっていた沙和だったが、相原が靴やバッグのことを考えないわけがないというところまではまだ気づいていないのだった。  ◆  とにかく早く着てと相原に言われて、顔を洗って髪の毛はまだ半分濡れた状態のままで沙和はワンピースに袖を通した。肌にも優しい着心地で、とても軽い。着ていて気持ちのいい素材だった。 「ど、どうかな……?」  おずおずとリビングで待つ相原のもとへと行くと、相原は目に見えて嬉しそうな表情になった。 「よく似合ってる」  相原がすっと音もなく沙和に近づいてきて、その腰に手をまわしてくる。生地越しの手つきがいつもよりもなんとなくまとわりつくように感じて、沙和は引き寄せられるままに相原の首元に顔をうずめた。 「サイズ、ぴったりだったな」 「うん」  寝室に鏡はないので、沙和はまだ自分がどんなふうに見えているのかはわからない。けれど、相原の反応をみる限り、きっと及第点なのだろう。 「こんな上品なワンピース……結婚式に行く時くらいしか着たことないよ」 「ああ……まあそうかもしれないな」  言いながら相原の手がそっと沙和の背中を撫でた。腰の方からゆったりと手を上部へと動かして、重なりあっているオーガンジー生地の境目から手を忍ばせてくる。素肌にふれた相原の手は、熱かった。 「背中がもっと開くかと思ったんだが、案外隠れてるな」    そこだけは不満だとこぼしながら、相原は優しいタッチで触れてくる。そのまま肩甲骨まで撫でられて、沙和は「ん、ちょっと……」と身をよじった。 「ね、まだ朝ごはんも食べてないし、一旦脱いでもいい? 出かける前にまた着て……」 「ああ、もちろん」  でもその前に……と相原は沙和をひっくりかえす。そのまま何も言わずに背中のファスナーを下げてくるから、沙和は驚いて動きが止まった。それに乗じて首の後ろのボタンも外されて、急に背後に開放感が訪れる。 「き、着替えは向こうでまたしてくるから……」 「何言ってる」  背後で相原がかがむ気配がして、今度は生ぬるい感触がした。沙和が敏感に反応を示すのを見越したのか、両腕が押さえ込まれて身動きがとれない。 「あっ……相原!」  ひたりと相原の舌が沙和の背中に吸い付き、そのまま音をたてて舐め上げられる。ブラのホックもすぐに外されて、障害物のなくなった背中にひたすら甘いリップ音と淫らな水音が響き始めた。 (あ、朝からなんてことをっ……!)  それは夜でしょ! 夜やることでしょ!!  そう言いたいのを我慢して沙和は「ま、待って……今、まだ朝! ごはんっ……」と焦りながら、相原の説得を試みた。 「朝食は少し後にしよう」
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