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天井から降りてきた檻仕様のエレベーターが、かすかな音を立てて地下室の床に到着した。光紀は片膝をつくと、檻の柵部分をつかんで囁いた。
「どうでしたか、希純さん。なかなか素敵な家でしょう? ここに住めば、毎日これに乗れるんですよ?」
「……っ」
「ちなみに、この家を建てたのは小此木さんの知り合いで俳優のDomの方ですが、このエレベーターや他の設備を考えたのは脚本家でSubの男性だそうです。こういう檻に入りたいという願望が、希純さんにもあるんじゃないですか」
見る見るうちに希純の頬が紅潮する。唇が震えている。
反論したい。でも言えない。否定したい、でもできない。葛藤するSubの姿を見ていると、Domはそれだけで高揚する。
「そろそろ出してあげますね」
安全確認は欠かせないが、このエレベーターは光紀にとっても魅力的だった。解錠して入り口の扉を上げる。
「Come」
Glareをこめて伝えると、希純はおずおずと檻から出てきた。
「これの乗り心地はどうでしたか? 怖くなかったですか? Say」
「……こわくは、ない。でも、ドキドキした」
「閉じこめられて、一人にされたから?」
「うん。このまま、ここから出られなかったら、どうなるんだろうって、思った」
子どものように幼く、たどたどしい口調で言われると、光紀は胸が締めつけられるような気持ちになる。
「僕が、希純さんを閉じこめて放置すると思った」
「ちがう」
「じゃあ、本当はもっと放置されたかったんですか?」
Subはなかなか、自分の願望を口に出せない。自己主張の強いDomとは正反対だ。相手の顔色を読み、言いたいことが言えなくなる。Switchの希純だったが、光紀といる時はSubそのものだった。
「そうじゃなくて。光紀の好きなように、して欲しくて。したいこと、やりたいこと、全部、されてみたい、から」
「Good boy」
光紀は希純を胡座の膝に載せると、肩から背中にかけて、手のひらでゆっくりと撫でさすった。Collarを嵌めた首に触れれば、くすぐったそうに鼻を鳴らす。
「僕のために、全部を捧げてくれる希純さんが好きです」
「んっ」
「今日は、これも持ってきたんですよ」
光紀は手を伸ばしてリュックを引き寄せると、中からLeashと黒革のベルトの束を取り出した。
「使って欲しかったら、自分でおねだりして下さい」
「どっちもつけて欲しい、光紀に」
「なにをつけて欲しいか、ちゃんと伝えて」
希純は少しためらうように口ごもっていたが、顔をあげると意を決してつぶやいた。
「CollarにLeashを繋いで欲しい。それに、ハーネスもつけて。俺を、光紀のペットにして」
「よくできました。じゃ、Strip」
光紀がCommandを使うと、希純は耳まで赤くして頷いた。
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