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私がどうやって晴海から秀人を勝ち取ったか。
それは我ながら鮮やかだった。
…私は晴海に泣きながら言ったのだ。
「秀人が、秀人が…」
「どうしたのよ?!あんた何か、秀人にやったんじゃないでしょうね?!」
「違うの…私、秀人と一緒にカフェに行こうと思ったら、秀人が知らない女性を組み伏せてるのを見ちゃって…!」
「…はぁ?」
晴海は信じられないと言ったような表情を浮かべた。
「あんたどうせ、私から秀人を引き離そうとしてんでしょ!」
「違うの!信じてよ、あんな男だと思わなかった…私、秀人とは結婚したくない!」
元々高校の演劇部所属、コンテストで優勝したこともある私の演技力はすごかった。
本気で泣いている私を見て、晴海は流石に動揺したのか、大丈夫?と声をかけてきた。
「裏路地で、キスしようとしてて…」
「もういいから。わかったから」
晴海は小学生の頃、いじめられていた私を助けてくれた子だ。どんな愛憎劇を私と繰り返そうとも、おめでたい根っこの部分だけは絶対に変わらない。
「ごめんね、最初信じようとしなくて…」
晴海は結局優しい。いや、甘いのだ。
私はそれから一週間、秀人とは会わなかった。晴海と一緒に過ごした。晴海は完全に私を信じ切っていた。
晴海が寝た深夜、私は秀人に連絡した。
「秀人…遅くにごめんね、今から会える?」
私は夜の妻としての仕事には自信があった。
何人もの男と付き合ってきて、培ったテクニックは、もうどんな男をもメロメロにするのだ。
「いいよ」
その日私は、秀人の家で過ごした。
翌日晴海がまだ起きていない早朝に、晴海のところへ戻った。
秀人からは、「付き合おう」と一言、メールが来た。
その日私は、晴海に全てばらして晴海の悔しそうな顔を見た。
とても、とても心地が良かった。
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