一番目のアンカー

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一番目のアンカー

運動会の前日、あの子が交通事故にあった。幸い命に別状はなかったけれど、足の骨にひびが入って、走るはずだったリレーのアンカーは他の子になった。「ワタシが一番速いのに!」そう言って泣きじゃくる彼女の悔しさを私は知っている。ずっとアンカーになりたがっていたから。今日、それが叶うはずだったのにこんな事になってしまったのだから。 「なんでこんな目にっ」地団駄も踏めない自分の足を何度も叩いて悔しがる。その様子に、新しいアンカーの子は走りたくないと泣きだしてしまった。彼女の剣幕を恐れたのではない、“彼女も”走れなくなったからだ。 昨日、怪我をした子がもう一人居た。最初にアンカーに決まった子だ。その子に続いて、二番目の候補だった彼女までが怪我をした事で、何かの呪いではと怖くなったのだ。それは違う、彼女がドジを踏んだだけ。ライバルを排除して逃げる途中に。 誰か気付いて。こんな事なら私、アンカーになんて……。
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