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習慣
あれは酷い夜だった。まだ寒い二月のある夜、僕は見ず知らずの集団に突然襲われた。ただ道を歩いていただけなのに。
老若男女、沢山の人が居たけれど、知った顔は一つもない。それなのに笑いながら追い掛け、物を投げ付けてくる。特に子供は容赦ない。徒党を組んで、奇声を発しながらやってくるのだ。その様子を大人達がスマホやカメラを手に囃し立てる。「それ頑張れ!やっつけろ!」「いいぞ、いいぞ!」逃げれば逃げる程大きくなる歓声。それでも僕は逃げ続けるしかなかった。どうしてこんな事に……寒空に冴えるネオンの中、そんな事を思いながら。
何時間経っただろう。僕は逃げ込んだビルの隙間で朝を迎えた。通報されたのか、警官が苦笑いで話し掛ける。「お兄さんどうしたの、酔っ払って寝ちゃった?そんな格好じゃ寒いでしょ、コスプレ?」彼は僕の角と青い肌を見て、まるで“本物の鬼”だと感心した。節分の翌日、僕が襲われる事はなかった。
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