喧嘩別れ

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喧嘩別れ

その光景に、僕は息ができなかった。 恋人と喧嘩をして外へ飛び出た瞬間、しまったと思った。ここが旅先だということを思い出したからだ。プロポーズしようと決めていたから、彼女が行きたがっていた所を選んだ。それなのにこんな事になってしまった。 喧嘩の原因はこの旅行そのものだった。彼女が思っていたのと違うというのだ。ホテルも食事も窓からの眺めも何も彼も。部屋が狭い、プールは?温泉は?ここをどんな所だと思っていたのだろう……それは無茶な注文だった。彼女は自分の理想と余りに掛け離れた現実に我慢できず僕に当たり、ついには出て行けと思い切り突き飛ばした。僕は壁や天井にぶつかりながらドアまで飛ばされた。 「こんな所、来るんじゃなかった」その言葉に、僕は外へ飛び出したのだ。 もう二度と戻る事はできないだろう。だってここは、宇宙なんだから。
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