贈り物

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贈り物

「どうしてこんなことしたの」警官が呆れたように言うのを、僕は呆気にとられて見詰めた。どうしてって……どうしてわからないんだろう。見たらわかるじゃないかって。 僕は彼女のストーカーだと思われているらしい。けれど、そう言っているのは彼女じゃない。僕達の様子を見た近所の人と、彼女が駆け込んだ病院の人が騒ぎ立てたのだ。 確かに僕達は口論していた。僕が浮気したとか結婚しているとか、そんな疑いを掛けられて。これも、言いだしたのは彼女じゃない。僕の元交際相手が嫉妬から自分と僕の写真や嘘を書き綴った手紙を彼女の家のポストに放り込んだんだ。混乱する彼女を宥めようにも、聞く耳を持っていないようだった。 「だから“聞く耳”をあげようとしただけです」血が滲んだガーゼ越しに自分の右耳辺りに触れる。彼女も嫌がってはいない筈だ。だって、僕の耳を受け取って医者にこう言ったんだ。「お願い、早くこの耳を付けて!」
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