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 二人でした会話の全部を覚えているわけではないけれど、横井くんとそんな会話を専門学校の休憩室でした記憶もない。週一回、土曜日に通う専門学校。みっちりと詰め込まれたカリキュラム。休み時間に一息をつく休憩室が私と横井くんの談話空間だった。 「単に僕の想像ですけどね。きっと『食い扶持』のためでしょ? 坂上さんも」 「『食い扶持』って……横井くん、露骨」  その直接的な言葉使いに苦笑したけれど、それゆえに裏の無い言い回しが今の私には気持ちよかった。 「違いました?」 「違わないけれど」 「ほらやっぱり」 「でも、言い方」 「小説とちがって短い会話文のフレーズで差し込むのが戯曲ですからね。僕らに『地の文』は無いんで」  そう言うと、何故か横井くんは「へへへ」と得意気に笑った。 「創作はお金にならないですからね。一攫千金とかいうけれど、一攫も無くて小数点以下四捨五入したらゼロにしかならないような確率でしかお金は入って来ない。創作を続けたかったら上手く『食い扶持』を見つけるしかないんですよ」 「横井くん、達観してるわねー。私より若いのに」 「若いって言ってももう二八ですからね。両親と親族から見限られるには十分な年齢ですから」  そう言ってから「あ、お婆ちゃんには応援してもらっているんですよ?」とプライベート過ぎる情報を足した。 「そういうのって不純だとは思わない?」  思わず質問がこぼれ落ちた。言ってから、失言だったかなって思ったけれど、この際関係ない。 「え? 行政書士勉強している他の人にですか? うーん、思いませんねぇ。大学生たちは世間も分からないままにやっているし、働きながら通っている上の世代だって、まぁ、それぞれに現実的な理由があるんだろうし。僕らはむしろ、誠実な方だと思いますけれど?」 「あ、違うの。そうじゃなくて、創作活動に関して」  一瞬、止まって、目を見開いてから、「ああ、そういうこと」と、横井くんは何度か頷いた。 「だってどこかで、創作活動にストイックになりきれてないって思うじゃない? 人生賭けていたら、退路を断ってやるべきじゃないかなって」
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