15人が本棚に入れています
本棚に追加
夜の町を、黒装束に身を包んだ人影が走る。
警備隊の笛から遠ざかるように角を曲がり、石畳を駆けあがって、さらに高く舞う。
見下ろす先に見えるのは、月の光に映える銀髪の男性。
それを目にしながら、ノクスは――シャリーマは囁く。
――ごめんなさい、旦那さま
軽業師のような身のこなしで、高い壁を、屋根を跳ぶ姿を追いながら、アレスタシオンは誓う。
もうあんなふうに、天から落下する姿は見たくない。
だから、自分がどこまでも追いかけよう。すぐに助け出せるように。
己の姿を偽っているメイドと、己の心を隠している主。
二人は、昼と夜の顔を使い分けながら、今日も何食わぬ顔をして暮らしている。
仮面が剥がれるその日まで。
最初のコメントを投稿しよう!