おれの自習の先生

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 昔からケンカばっかりしていたから、おれはみんなからヤンキーだって思われてんだけど、つるんでたヤツもそんなのばっかだったし、「強いヤツが偉い世界」で生きているのが気持ちよかったから、べつにそれでいいと思ってた。  でも中二になってすぐの頃、よその中学のヤツらとモメてケンカになって補導になって、警察署に来た母親と、それに生徒指導の小宮先生(コミセン)に泣かれたときに、よく分からんけど心がガーンってなった。  アタマが悪いから、そのときの気持ちをどう言えばいいのか分からんけど、とにかくなんかに気がついたんだと思う。  だから、マジメになろうって決めた。  で、「マジメになる」ってどういうことだろ? ってなって、まあとりあえず「勉強をがんばる」ってことなんじゃないかってなって、勉強をがんばることにした。  で、どうせなら、先生を目指してみようかなってなった。  なんでそんなこと思ったのか自分でもよく分からんけど、コミセンが泣いたのを覚えてたからなんだろうなって思った。これもどうやって言葉にしたらいいのか分からんけど、簡単に言ったら、たぶん感動したんだと思う。  で、夏休みに入って、親に頭を下げて塾へ行くことにした。  とりあえず受けることにした二週間の夏期講習は、クラスに同じ学校のヤツがふたりいて、どっちも今まであまりカラんだことなかったけど、なんだかんだ良いヤツらだったから、二週間はあっという間に過ぎた。  で、そのふたりは夏期講習だけだったけど、おれはもっとがんばろうって思って、また親に頭を下げて、塾を続けることになった。  正直、小三の頃に割り算でつまずいてから勉強をあきらめたせいで授業はぜんぜん意味が分からなかったけど、ちょっとずつ意味が分かるようになっていくのがなんか面白くて、気がついたら、けっこう勉強が好きになっていた。  古典も連立方程式も、まだぜんぜん分からんけど。
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