それは誰の声?

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ピンポーン ただっ広い部屋にチャイム音が鳴り響く。はぁーいと返事をしながらドアを開ける。 カチッ ガチャ そこにはいつもより数倍、いや数百倍、黒いオーラを纏った副会長 氷河知弦が立っていた。 「ふふっ。今日は用事があるので、1人で来て下さいと言いましたよね?」 にっこりと笑顔で告げる。顔は女神の微笑みかと思うくらい美しいのだが、オーラが黒すぎる。黒い圧がすごい。あ、これ終わった。俺死んだわ。 生徒会室に行くまでに、耳にタコができるくらい説教された。もう疲れた…。知弦こと、ちーちゃんの説教が終わったかと思うと、また"ぼく"の声が響いてくる。 『ねぇねぇ!なんで無視するのさ!』 『久しぶりなんだからさぁ、話ぐらいしよーよー!』 『ねぇー!聞いてるー?』 ああああ!!うるさいうるさいうるさい!!あーもう!ちゃんと聞こえてるから!!だから、今じゃなくて後にして!部屋戻ったらいくらでも話聞くから! そう心の中で返しながら、歩みを進める。 『えーやだ。ぼくが今話したいんだから。』 『拒否権なんかないってこと知ってるでしょ?』 『ぼくを××したんだから。』 あ、ああ…。そ、うだよね。ごめ、んね。俺が悪かったよ。ごめんね。"ぼく"の話聞くから。だから、だから"僕"だけは赦してあげて…。 『赦す気なんてないよ。だって、お前が悪いんだろ?』 『この人殺し。』 乾いた声が頭に響く。過去を思い出させるように頭がズキズキと痛み出した。 ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。"僕"が全部悪いから。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、 「柚希…?大丈夫ですか?」 「なんだか顔色が良くないようですが…?」 ちーちゃんの声と"ぼく"の声が重なる。顔をあげると、心配そうな顔をしたちーちゃんが僕を見ていた。これ以上迷惑をかけたくない。だから、いつも通りにヘラヘラ笑って返せばいい。これまでだって、上手くやってたんだから。大丈夫。俺ならできる。この頭の痛みも何とかなる。大丈夫、大丈夫、だいじょうぶ、だいじょうぶ、ダイジョウブ? 「ちーちゃん、だいじょぶだよぉ〜」 「ちょっと考え事してただけ〜」 緩いヘラヘラした口調で返す。そうしたら、誰も"ぼく"には気付かないから。気付いてはくれないから。
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