琴子の、新しい家族の形

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琴子の、新しい家族の形

「エルゥ、ありがとう」  家に帰って食事の準備をしているエルゥにお礼を言うと、彼は照れくさそうな顔をした。 「大したことはしてないよ?」 「ううん。エルゥが居てくれて良かった」  鍋を見ているエルゥの背中にぎゅっと抱きつく。温かくて、いい香りがして、なんだかすごく落ち着く。 「め、めずらしいね。琴子から触ってくるなんて。どうしたの?」  エルゥから動揺する声が上がる。そしておたまがカシャンと床に落ちた。  私が触れるのもめずらしいけれど、エルゥがここまで動揺するのもめずらしい。ふだんの私は、どれだけ塩対応なんだ。 「……エルゥ。私、家族が居なくなった」  ぽつりと漏らした言葉は、針のような鋭さで自身の心を貫いた。  祖父母も、母も、最初から『家族』ではなかったけれど。だけどそれでも『血縁』だった。 『天涯孤独』なんて言葉が、じわりと胸に広がっていく。  あの人たちが居ても、私は『一人』で寂しかった。だけど居なくなるのは、もっと寂しい。 「琴子」  エルゥは振り向いて、じっと私を見つめた。私もその穏やかな瞳を見つめ返す。 「琴子の理想の家族って、どんなもの?」 「え……」  唐突なエルゥの問いに、私はあっけに取られる。  だけど彼の顔が真剣だったので……私は想像してみた。  私が欲しかった、幸せな家族のイメージを。
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