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「帰ったらね『おかえりなさい』って言って欲しい。それで『美味しい』って言いながら、一緒にご飯を食べたい。病気の時には当たり前みたいに心配して欲しい。お休みの日には一緒に出かけて欲しい。肩を並べて一緒にテレビを見て、同じタイミングで笑いたい」
幼い頃、他の『家族』が羨ましくて仕方なかった。
そんな思いが溢れて、溢れて。言葉が止まらない。
「それでね。側に……ずっと居て欲しい。私、寂しいのは嫌……」
ポロポロと雫が頬を流れる。その雫を、エルゥの手が優しく拭ってくれた。
エルゥは、なぜか嬉しそうに笑う。そして……
「その条件だと、僕と琴子は理想の『家族』だね」
そう言いながら、優しく私を抱きしめた。
ああ……そうか。
エルゥとの日々は、今まで欲しかった『家族』の形そのものなんだ。
「私、エルゥの家族なの?」
「うん、僕はそのつもりだよ」
「そっか。エルゥが……私の家族なんだ」
悪魔とその飼い猫という、とても奇妙な家族構成だ。
だけどそれはそれで……悪くはない。
「ずっと一緒に居るって約束したしね」
エルゥはそう言うと、私を抱く腕に力を込める。その力強さが、私の不安を優しく撫でた。
「……約束、破らない?」
「破らない。一生一緒に居るし、幸せにするし、お腹も空かせないよ」
エルゥにそんな意図はないのだろうけど。
それはまるで、プロポーズの言葉のようだ。
いつかエルゥと、飼い主と猫以外の関係になったりするのかな。
そんなことを考えてしまい、私は慌ててその考えを打ち消した。
「琴子、一緒に幸せになろうね」
私の『家族』である『悪魔』は、そう言うと絶世の美貌に無邪気な笑みを浮かべた。
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エルゥと琴子のお話は、こちらで一旦一区切りとなります。
二人の関係がもっと進展するお話は公募関係の原稿が落ち着きましたら追加に参りますので、気長にお待ち頂けますと幸いです。
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