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インキュバス風炊き込みご飯と豚汁
「エルゥ、いい匂いがする!」
台所から漂う炊き込みご飯の炊ける最中の香り。それは激しく胃袋を刺激する。それに重ねて味噌のいい香りまでしてきたのだからたまらない。
「琴子、我慢して」
「うー……」
私はクッションを抱えて、じりじりと夕飯の完成を待った。
……着々と、エルゥに胃袋を掴まれてるな。
エルゥがいなくなったら、また粗末な食生活に戻るのだと思うとゾッとする。
たまには私もご飯を作って、料理を覚えた方がいいのかな。簡単なものなら、作れなくもないんだけど。
でも、どうにも億劫なんだよなぁ。
一人でいる時は、ご飯を食べるのも億劫だった。
だけど今では……エルゥのご飯を食べるのが日々の楽しみになってしまった。
警戒心を持ち続けねばとは思っているけれど、この悪魔は居心地がいい場所を作るのが異様に上手い。くそぅ、負けないぞ。
「琴子、できたよー。テーブルの用意して」
「わかった!」
エルゥに声をかけられ、私は思考を打ち切った。
部屋の隅に立てかけている猫脚テーブルを、『いつものように』ラグの上に設置する。するとエルゥが『いつものように』ランチョンマットを敷いてから、『いつものように』夕食を並べていく。
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