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エルゥとの生活が……私にとって『いつものもの』になりつつあることをしみじみと感じる。
……鼻歌を歌いながら炊き込みご飯を椀に盛る、頭に角がある絶世の美青年は本来ならば日常とは言い難いもののはずなんだけどな。
「三合炊いたから残ると思うんだ。だから明日の朝ご飯にも出そうね」
エルゥはそう言いながらことりと茶碗をテーブルに置く。炊き込みご飯の横には、具だくさんの味噌汁――いや、これは豚汁だな――がほかほかと美味しそうに湯気を立てている。
すりおろした生姜と茗荷を乗せた冷奴もテーブルに置かれ、食卓は完成だ。
「琴子、ビールでいい?」
「うん、ビールがいい。豚汁にはビールだよね」
異論は認めない。日本酒とでも美味しいけれど、私は豚汁にはビール派なのだ。
今日はめずらしく、エルゥも飲むらしい。グラス二つにビールを注いで、彼は一つを私に渡した。
「「いただきます!」」
二人でパン! と手を合わせる。そして私は、まずはご飯茶碗を手に取った。
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