第23期生徒会

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第23期生徒会

「それでは会議を始めます。今日の議題は俺の告白について。詳細は各自配られた資料を見てください」  隔週で開催される定例会議で我が中学校の生徒会長である正木先輩が宣言した。手元の資料には「正木の告白を成功させる計画(案)」と印字されていた。 「え?あの…」 「なんだ」  コの字型に配置した机の正面に座る正木先輩の向かって右側、僕の正面に座る長い黒髪の麗しい副会長の永瀬先輩が資料と先輩の顔を困惑気味に見比べている。 大丈夫永瀬先輩、みんなあなたと同じ気持ちだ。 「これはどういうことでしょうか」  野球部と掛け持ちをしている爽やか少年、会計の矢部が恐る恐る手を挙げ発言した。正木先輩は器用に片眉を上げて言った。さも当然であると。 「見ての通りだ。まず1ページ目に概要が書いてあるので読んでくれ。それから次2ページ目からは対象との接触した経緯を載せた。参考にしてほしい。対象のデータは4ページ目に記載した。具体的な計画は5ページ目だ。他に聞きたいことは?」  全く意味がわからない。いや、意味は分かっているのだが意味がわからない。どうか僕の気持ちを察してほしい。 「あのー…」  僕と同じ、書記の邑田さんがおずおずと口を開く。彼女はいつだって控えめで、今時みつあみがよく似合う。ぶっちゃけ好きです。 「この対象って、先輩が告白する相手なんですよね?」 「そうだ」  へー…そうなんだー……。 「えっと、篠崎雅紀さんてそのー…男子生徒?」 「そうだ」  あまりに堂々としているので僕らは皆気圧されて黙った。 「彼はすごく格好いい男なんだ。俺は本気だ。是非力を合わせて成功させよう。自由に意見を出してもらいたい」  正木先輩は真面目で責任感のあるちゃんとした会長だ。ちょっと抜けたとこもあるけれど頼りになる。 「…矢部くん、篠崎さんは君と同じ学年みたいだからリサーチをお願い。邑田さんはまとめてレポートに起こして。工藤くん」  さくさくと小気味のいい指示を飛ばす永瀬先輩が僕を見た。美人だ。 「板書お願い」 「はいっ」  永瀬先輩がみんなの顔を順番に見回す。最後に我らが会長をみやって頷いた。 「では今日の議題、正木会長の告白を成功させる計画の会議を始めます。意見のある方は挙手を」  僕らはみんなそんな正木会長がとっても好きなんだ。「やるからには徹底的に」がモットーの今期生徒会。僕はホワイトボードに力強く本日の議題を書いた。
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