07:妖力覚醒! ヌエの化身・美晴

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「……みんな、助かった……」  ケガをしたのは麻里菜だけだった。 「マーニャ・ビス」  磁力を発生させる魔法で、麻里菜は肩の傷口に刺さったままの実弾を引き寄せて、取り除く。 「麻里菜、うちらやったよね! やっちゃったよね!」  美晴が興奮した声で、また麻里菜の手をにぎった。 「やっちゃったけど、やりとげた」  ドヤ顔をした麻里菜は、左手を美晴の額にくっつけた。  美晴はもとの、茶髪のポニーテールに明るい茶色の瞳に戻る。額の第三の目もタヌキの耳も尾のヘビも消えていた。  麻里菜も自分の額に手を当て、もとの姿に戻った。 「えっと……とりあえず病院行こうか」  ようやくドアの前に来た担任が、手招きをしている。 「大丈夫です。さっき弾も取りましたので」 「いやいやいや……そのケガで?」  麻里菜が大丈夫というには、もちろんわけがある。妖力を持つもの――妖怪は、ケガをしても治るのが驚異的に早いのだ。  すでに傷口の広い、肩と頭からの出血は止まっている。 「あのね、学校は生徒を預かっている立場なんだよ。学校にいる時や登下校中に何かあったら、学校はしっかり対処しなきゃいけないんだ。だから……とりあえずは病院で手当てをしてくれるかな?」  そう言われちゃ、そうか。 「……わかりました」  麻里菜は渋々うなずいた。 「他にケガをした人はいないか?」  クラスメイトは互いに見て聞き合う。 「大丈夫だよね?」 「うん、あの子が守ってくれたから」 「大丈夫です」  ここで、別の制服を着た警察の人が入ってきた。 「今からすぐに現場検証を行いますので、生徒のみなさんは一旦教室を出ていただけますか?」 「じゃあ、君はあそこのストレッチャーに」  教室を出てすぐ、ストレッチャーと救急隊の二人が陣取っていた。足を引きずることなく歩いてきた麻里菜に、救急隊の一人が声をかける。 「自分で乗れる?」  うなずいて、麻里菜は左手をついてストレッチャーに寝転がった。低くしてくれているので、ケガをした左肩にそれほど力を入れずに済んだ。 「動きます」の合図でストレッチャーが上がり、自分の頭を前にして動き出した。 「生徒用玄関は色々メディアの人たちが来ているので、裏の職員用玄関から出ます。ああ、外に出てから救急車に入るまではブルーシートで隠してくれます」  学校で生徒を人質にして男が立てこもってるなんて、そりゃあ来ちゃうよなぁ。  い、一ミリの隙間も開けるなよ……。
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