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「埼玉県警察の者です。事情聴取をお願いしたいのですが、体調は大丈夫そうですか」
警察手帳を見せてきた二人に、麻里菜はうなずいた。
「名前は、小林麻里菜さんですよね」
「はい」
「ここに来る前に、他の生徒さんや先生方から話を伺いました」
えっ……どこまで話されちゃった?
麻里菜の鼓動がまた速くなった。
その後、入学式が終わった後から順に、あったことを説明していった。
男が教室の中に入ってきたこと、人質にすると言われたこと、降伏させようとしたこと、警察の勘違いで事態が悪化したこと。
そして、ここからだ。
自分が変化したことを言うべきか、言わないべきか。
他の人は言ってしまったのだろうか。
麻里菜の口が止まった。
「それで男を止めようとしたら、左肩を撃たれて、投げ飛ばされた……そういうことですか?」
「……そうです」
お願い、辻褄が合ってくれ……!
「やっぱりそうなんですね。でも『歯向かう奴は死んでもらう』って言われたのに、どうして止めようとしたんですか」
ギクッ……
麻里菜は少し考えてから口を開いた。
「男はそもそも、警察に変な恐怖心を持っていました。それに、『あなたが抵抗しないなら、私たち警察もそんなことはしない』って言われたのに飛びかかってこられました。男からすればうそをつかれたと言えます。しかも私を信じて降伏しようとしたのに……」
麻里菜は二人の目をじっと見た。
「信じてもらえたのにうそをつく結果になってしまったからには、私が責任を負わなければいけないって思いました。だから止めにいきました。死んでもいい覚悟で」
あとは……
「でも、私を助けてくれた人は美晴ちゃん……高山さんしかいませんでした。誰かの勘違いさえなければ、私が骨を折ることもなく、男に罪を重ねる必要もなかったかもしれないのに……」
麻里菜はうつむいた。警察の二人は何か言いかけた言葉を飲みこんだようだった。
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