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「その赤子に第三の目がないとは言わせねぇぞ」
「とっとと渡せ!」
私は泣いていた。怖い。
「さて、その赤子を手に入れたら何しよう? まずは赤子の力を使って王族を蹴散らすまでだな!」
「さんざん王族に振り回されて嫌気がさしてたけどよ、第三の目を持つ子を、二人も生んでくれちゃうなんてな!」
父の太く威厳のある声が響いた。
「あなたたちには渡しません」
しかし、父の声を聞いたのはこれで最後だった。怖い人たちに連れ去られはしなかったけど。
私は母の顔に似た人の腕に抱かれていた。
「殿下、マイナーレ様とフェリミア様をを引き取ってこられて、どうするおつもりですか」
「ああ、狙われているからといって、姪であるこの二人を殺めるわけにもいくまい。第三の目を封印して、人間界に送るほかないだろう」
「に、人間界に!? お二人はまだお生まれになって間もないのに!」
「この世界にいる以上、ずっと追われることになる。人間界に送って、生きられなかったら仕方がない。直接私が殺めず争いが起きない、唯一の方法だ」
手を前に出すと、人間界への道が作られた。
私は聞き逃さなかった。人間界に吸いこまれる直前に聞いた言葉を。
「本意ではないが、すまない」
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