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私が二歳になるころ、里親希望の夫婦が施設を訪れた。小林さんと言うらしい。私は夫婦の前に出された。
「この子がまりなちゃんなのね」
この夫婦は二年前、待望の赤ちゃんを授かり出産したものの、生まれて一週間後、赤ちゃんの容体が急変し、亡くなったという。その赤ちゃんの名前は『麻里菜』だった。
「……あの子と顔がよく似てる。まるであの子と双子のようね。」
「ほんとだ。麻里菜とそっくり。年も同じようだし」
「そうね。この子の里親になりたい」
私はこの夫婦と一緒に暮らすことになった。
「名前は、麻里菜でいい? あの子と同じで。」
「ああ。俺もそう思ってた。」
二人は顔を合わせてうなずいた。
「よろしくね、麻里菜ちゃん。」
新しいお母さんが私の頭をなでると、新しいお父さんは私を抱き上げ、たかいたかいをしてくれた。
お母さんが聞く。
「あの…この子の『まりな』という名前って、誰がつけた名前なのですか?」
「えっと、確か……名前が分からなかったので、私たちがつけました。」
「そうでしたか」
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