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そして、ここを去る日。
私はお父さんに抱っこされて、久しぶりに施設の門を出た。
新しい家に着くと、私は布団の上に寝かされた。こんなきれいな家は初めて見た。
そういうことにしてしまいたい。私のありったけの妖力で。
実は第三の目を封印しただけでは、妖力までは封印しきれていなかった。大人の言っている言葉が、生まれてからずっと分かっていたから。
「麻里菜ちゃん、ちょっと待っててね。」
お母さんが目を離したすきに、私は両手を握って封印しきれていなかった妖力をすべて使った。
「思い出を、変えて。」
私はすべてを忘れた。
私に関わった人の記憶も、書類も全て改造した。
お父さんとお母さんの記憶の中には、『娘が生まれてすぐに亡くなった』ことは消えてなくなった。そうした方が都合がよかった。
私は「小林家」の実の長女となったのだ。
私は普通の人間と同じくらいの能力になり、もはや魔法使いの父と妖怪の母との子であることすら感じないほどだった。
五歳くらいからの記憶は断片的に出てくるが、それ以前はまるで霧がかかったかのように出てこなくなった。普通の『人間』と同じになった。
◇ ◆ ◇
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