09:キュウビの過去(一人称視点)

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 それが、人間界をめぐる戦争が妖魔界で起きたことなんだ。  知らなかったでしょ?  その人たちは、私が赤ちゃんのころに連れ去ろうとしたあの人たちで、まず妖魔界を乗っ取って人間界にも手を出そうとしてた。  人間界育ちの私の分身は、そりゃあもう怒って、妖魔界と人間界を守るために立ち上がった。  こっちではありえないけど、あっちの戦争ってサドンデスなんだよ。どちらかの敵がいなくなるまで戦い続ける。人間と違って、一人になっても何かしらの能力でリカバリーできるからかな。  私の分身は、一対一に残ったところで、『身体』と残りの『魂』を召喚して完全体になった。  要は私も戦争に駆り出されたわけ。  そして、分身――まぁ完全体になったから『私』はね、唯一生き残った敵を倒すことなく戦争に勝った。そう、実は敵たちを改心させて戦死した人たちをよみがえらせる、ものすごい力を使ったんだ。おまけに、戦争で荒廃した土地でさえ元通りにしちゃったんだって。そういうつもりはなかったみたいだけど。  その代償に、私は自分の命を投げ出した。  うん、私一回死んでるんだ。  今私が生きてるのは、生き返った人たちが必死に私に呼びかけてくれたから。 「どうか、あの英雄も生き返らせてください」 「あのお方なら新しい世を築けたはずなのに……!」 「リーダーなくして、私たちは前に進めません」  私は目を覚まして初めて、分身が本当に信頼されていたことを知って。その後、私は人間界に帰り、分身は妖界と魔界を統べる女王になった。  それからは狙われてた人間界も平和になって、万が一のために持ってた妖力と魔力が必要なくなった。  それで、今朝までは分身の方に力を預けてたんだ。  まぁ、こんな感じかな。
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