1人が本棚に入れています
本棚に追加
相談を受けてから、一ヶ月くらい経った頃だったか。そいつ、かなりやつれてしまった。目の下の隈と痩せこけた頬のせいで、顔全体が暗く見える。
どうしたのかと聞くと、まだ宛名の違う郵便物が届くのだという。それも、今度は公共料金の請求書まで、そちらの宛名で届いたそうだ。
「それ、警察に行った方がいいって」
「行ったよ。行ったんだけどさ、……いや、その、ううん、なんでもない」
そいつは微かに震えながら、口の中でもごもごと曖昧に喋った。
「警察、ちゃんと対応してくれなかったのか?次は俺も一緒に行ってやるよ」
「いや、いい……」
俺の申し出を覇気のない声で断ると、そいつはそのまま、会社を早退してしまった。
最初のコメントを投稿しよう!