宛名

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 相談を受けてから、一ヶ月くらい経った頃だったか。そいつ、かなりやつれてしまった。目の下の隈と痩せこけた頬のせいで、顔全体が暗く見える。  どうしたのかと聞くと、まだ宛名の違う郵便物が届くのだという。それも、今度は公共料金の請求書まで、そちらの宛名で届いたそうだ。 「それ、警察に行った方がいいって」 「行ったよ。行ったんだけどさ、……いや、その、ううん、なんでもない」  そいつは微かに震えながら、口の中でもごもごと曖昧に喋った。 「警察、ちゃんと対応してくれなかったのか?次は俺も一緒に行ってやるよ」 「いや、いい……」  俺の申し出を覇気のない声で断ると、そいつはそのまま、会社を早退してしまった。
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