チョコレート

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 今日は待ちに待ったバレンタインデー。大好きな彼に手作りチョコレートを渡す日。  高校に入学して、彼と知り合った。同じクラスで、最初の頃はお互い余所余所しかった。だけど、だんだんと彼は私に興味を示してくれた。彼はきっと私のことが好きなのだと思う。  彼のそんな気持ちを感じていながらも、私は勇気がなくて、彼としっかり話したことがない。挨拶くらいしか交わしたことがないかも。それでも彼は私に優しくしてくれた。私が休み時間に一人でいる時、彼は必ず私に声をかけてくれた。遠くの席からでも、教室中に響くように。彼は沢山友達がいるから、その友達と一緒に私の席に遊びに来てくれることもある。  彼はクラスの皆の人気者。だから私なんかでは釣り合わないって分かってる。だけど私は、そんな優しい彼のことが大好き。彼もきっと同じ気持ちだと、そう思う。  この前、私が登校すると、机に手紙があった。それは大好きな彼からだった。送り主の名前は書いてなかったけど、すぐに彼だと分かった。だって、彼が遠くから私にアイコンタクトするものだから。彼はとてもニコニコしていた。  彼は人気者だから、クラスの皆と一緒になって私にプレゼントをくれたこともあった。理科の授業で実験室から帰ってきた時、カバンの中を開けたらプレゼントが入っていた。このプレゼントも、送り主はなかったけど、皆が用意してくれたものだってわかった。私がプレゼントを見て驚く姿を見ながら、みんな笑顔で拍手していた。彼も笑顔でこちらを見ていた。  そんな彼のことを私は大好きだから、私の手作りチョコレートを特別にあげようと思ってる。だけど、彼は意外と恥ずかしがり屋さん。だからコッソリと渡してあげたほうが良いと思うの。それに彼は皆の人気者、私と同じように彼のことを好きな女の子はきっと沢山いると思うの。そんな彼に堂々と渡せないから、彼のカバンにコッソリ入れておいたわ。彼が私にしてくれたみたいに送り主の名前は書かずにね。だけどきっと気がついてくれるはず。  彼、さっそくチョコレートを見つけてくれたわ。とても喜んでるみたい、周りに見せびらかしてるわ。  いつもの素敵な笑顔で、嬉しそうに食べてくれた。ニコニコしてる。  そのチョコレート、とっても美味しくできたの。とけるような美味しさ、私にしては上手にできたと思わない?  その瞬間、彼は床に倒れこんだ。私の作ったチョコレートを握り締めながら。なんだか苦しそうね。そんなに美味しかったかしら。嬉しいわ。さあ、美味しいから、みんなも一口ずつ食べてね。何をそんなに騒いでいるのかしら。そんなに食べたいなら皆にも一箱ずつ作ってきてあげれば良かったかしら。  床で苦しむ彼と目が合った。いつものアイコンタクトね、わかったわ。心の底からの笑顔で、彼に笑ってみせた。  大好きなあなた、苦しいほど愛してた。だから私の苦しみを背負って、とけて、死ね。
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