第一章 私は私が大嫌い

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しばらくして十五分間の掃除時間が終わった。私は廊下にある手洗い場にバケツの水を捨てにいく。それから掃除道具を元の場所に戻す。 すると、 「お前さ、そのままだといずれ壊れるよ」 美華吏がいきなり穏やかな口調でそう言った。 「それは、どういう…………」 私は言葉の意味がわからなくて戸惑いを隠せない中、ゆっくりと声を出した。 「今のままのお前じゃあ、いけないってこと。さき教室、戻ってるな」 そう言って美華吏は保健室をそそくさと出ていってしまった。 また心を見透かされたような気がした。 今の私のままじゃいけない、いずれ倒れるってどういうことだろうか。 そんなこと気にも止めなかった。 確かに母の怒り声を聞くのはうんざりしている。 私の行動もめんどくさがりすぎにはほどがあるのかもしれない。けれどやる気はわかない。母に言われないとやろうとする気にはなれない。 いずれ壊れる? 別にいじめられてるわけじゃないし、そんなことあるわけない。 私はため息をつき、気を取り直して教室に戻った。 どこからどう見たって不思議な見た目。 優しすぎる心。 そして私に言ってきた不思議な言葉。 私は美華吏に心を二度も見透かされたような気がする。 そして今の状況に戸惑いを隠せない私がいる。 彼は一体____。
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