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第二章 突然
翌日。
私は靴箱の前でただ呆然と立ち尽くしていた。
私の上履きがどこかにいってしまったのだ。
置き忘れたような場所はあるかというと、もちろんない。
昨日は確かに靴箱の中に置いていた。
なのに…………。
今はもぬけの殻だ。もはや存在すらもなくしたよう。
誰かの仕業?
そう考えるのが合理的だろう。
私は昨日、耳に聞こえてきた悪口のような声を思い出す。
まさか…………。
そう思った途端、心臓が凍ったような気がした。
そんなわけない…………よね?
私はそう思いながら苦笑いをし、上履きを探すのもめんどくさいので職員室へ来客スリッパを借りに行った。
来客用スリッパのパタパタという音がただひたすら廊下に響く。
いつもでは起きないことだからやけに異様な感じがした。
それに徐々に教室へ向かう足も重くなってきたような気がする。
私はそれを振り払うようにスカートの裾を強く握りながら階段をかけ上がった。
さすがに三階までとなると、息が荒くなる。
HRまで時間はまだあったので、私は階段の踊り場で座り込み、息を整えた。
しばらくして立ち上がり、私は教室へ向かった。良からぬことが起きていないのを祈りながら。
教室の引き戸を開けば、途端にざわざわしていたクラスメイト達が静寂になる。そして真っ先に私に集まってきた視線。それからひそひそと話始める。
私はこの状況に恐ろしいほどに鳥肌がたった。心を安らげようと七生と陽果がいる窓側の一番後ろの席辺りに顔を向ければ、二人はいつもと変わらず楽しそうに話をしていた。
私はそのことに胸を撫で下ろし、自分の席に向かい、鞄を下ろした。
すると、
「陽果、あっち行こう」
「そうだね」
そう言って二人は廊下に出ていってしまった。
いつもなら挨拶を交わして話をするのに、今日はこの有り様。私は予想外のことに息をのむ。
どうして…………?
私が何か気に触るようなことをしたのかな?
一瞬そんな思いが脳裏によぎるけれど、そんなことをした覚えはもちろんない。
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