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「どうして…………?」
私はやっぱり気になって聞いてみた。
「盗まれてたの知ってたから。場所はわかんなかったけど見つけれてよかった」
美華吏はそう言って私ににこりと笑いかけた。
でも授業中っていうところでどこからどうみてもおかしい。
授業よりもこっちの方が大事だったということ?
それとも、私が勉強を教えたからその恩返し?
そう考えると頭はむかむかしてきた。
そんなことしなくたっていいのに。
けれど心の片隅では嬉しいと思っている自分がいた。
やっぱり美華吏は優しすぎる。こんなダメな私にも優しくしてくれて、一体どこでそんな心を手に入れたのか、ますます問いただしたくなるぐらい。
「なぁ、清加」
美華吏は私の顔を覗きこむようにして呼んできた。
途端に私は我に返る。
「今日、なんか変じゃないか?」
私は即座にコクリと頷く。
本当にどうかしている。
「ま、様子見てみようぜ。で、これからどうする?」
美華吏は少し困ったような顔をしてそう言った。
どうするもなにも今は授業中だ。教室に行けば問答無用で先生には注意されるだろう。
おまけに私達は受験生。その分厳しく言われそう。
私は心の中でため息をつく。
わがままだっていうのはわかってる。だけど気持ち的には教室に帰るのも気が重いし、このままここにいるか、どこかでさぼるかでもしたい。
そうでもしないと、またいたたまれなくなって逃げてしまうだろう。
「戻りたくない」
私は吐き捨てるようにそう言った。
「やっぱりな」
美華吏はそう言って私に笑いかける。それから私に手を差し出してきた。
途端に私は戸惑いを隠せなくなる。
今まで誰かから手を差しのべられたことはあっただろうか。
いや、当然のようにない。私は何をやってもダメな人間なのだから。
私は私が大嫌い。それなのにどうして美華吏はこんなに優しくしてくれるのだろうか。
わからない。
でも心底、嬉しいと思っている自分がいた。
だから私は差しのべられた手の上に私の手を重ねた。
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