第二章 突然

7/7
前へ
/79ページ
次へ
そこから美華吏が私にどうして、ここにあったことを教えてくれなかったのか考える。実際、私からも聞いてはいないのだけれど。 きっと優しすぎる美華吏のことだから、私がガッカリすると思い、言わなかったのだろう。 やっぱり私と美華吏は正反対だ。 そう改めて確信しながら私は屋上を後にした。 上履きを履いてから教室に行けば、昨日と同じくざわざわしていたのが静寂になる。それからヒソヒソと話始める。 七生と陽果はいつも私の席の近くで楽しそうに話をしていたのだが、今日は二人そろっていなかった。 きっとまだ登校中かどこかで楽しそうに話してるかだ。それとも…………欠席? いやいや、あるわけない。 第一、あの二人が学校を休むなんてめったにないからだ。 美華吏はというと、昨日とは違って女子数人と話をしている。 その中の一人が一瞬だけ、こちらを向いて睨んできた。 私の足はガクガクと震え出す。 このことから私の上履きや鞄を盗んで、屋上のゴミ箱に捨てた人はこの子達だと予想した。 話したことはあるかというと、七生と陽果以外に友達はいないのだからもちろんない。 でも今までに何度かクラスが同じになったことはある。確か名前は……佳奈(かな)。リーダーシップがあって今年の夏までは女子バスケ部の部長を務めていたらしい。 私からの佳奈の第一印象は今まで、運動神経のある頼りやすそうな人だったのだけれど、今はそう思わない。私の鞄とかを盗んだとされる容疑者みたいなものだ。 私はため息をつき、いつも通り本を読み始めた。 すると、どうしたことだろうか。内容が全然頭の中に入ってこない。 きっと昨日と今日のことで疲れているのだろう。 私は本を閉じ、頬杖をついた。 これは紛れもなく私に対してのいじめだ。 受験生だから誰かをいじめている余裕なんかないはずなのに、どうしてこうなのだろうか。 どこかで聞いたことがある。私みたいに自己嫌悪な人は何もかもうまくいかないって。 まさにその通りだ。私の人生は何もかもうまくいってない。でもめんどくさがりな性格だから仕方ないだろう。 そんな私はどこからどうみてもダメな人間でいじめられたりされて当然の存在だ。 また、今まで自分が変わろうとしてなかったばちがあたったようにも感じる。 私はいいの。いじめられたって嫌われたって。もう私はこの人生にとっくにうんざりしてるから。   私はそのように自分に言い聞かせて、怯えている心を保とうとした。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加