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「ほら、受け止めるから話してよ。全部」
美華吏は穏やかな口調で言う。
今までそうとう私のことを心配してくれていて、もう見ていられなくなったのだろうか。だからこんなことをしてまで、無理矢理話させようとしているのか。
そう考えると、いらいらしてきた。
美華吏と関わり始めて、まだたったの一ヶ月。それなのにどうして、こんなにも優しくしてくれるのか、私にはわからない。
本当、バカみたい。
私のこと何も知らないくせにいきなり心を見透かしてきたような言葉を囁いてきた。それに不思議だと思っていたら、頭はバカでただやらされているだけだった勉強を教えることになった。そして私がいじめられるようになれば優しくしてくれて、いつも気にかけてくれて今だって私は彼の優しさに安らぎを覚えている。
何にも知らないくせに……。
本当、ムカつく。
「……いて」
あえぐような吐息とともに、私の唇から、洩れた声は、かすれて震えていた。
美華吏は「へ?」とキョトンとした顔で聞き返してくる。
話したって私の心なんかわかるわけない。私達は白と黒のように正反対だから。
「ほっといて!」
叩きつけるように言って、私は美華吏の腕を振り払い、逃げるように図書室を出た。
私のこと心配してくれなくたっていいのに。放っておけばいいのに。どうしてこうなるのよ。
もう心配させたくない。迷惑なんかかけたくない。本音なんか話せるわけがない。
私はいじめられたままでいいの。ダメな人間当然の存在だから。
こんな人生、もううんざりだ。
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