第一章 私は私が大嫌い

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「体調悪いので保健室に行ってきます」 私はそう言って教室を逃げるように出ていく。 その間に聞こえてきたのは浜崎先生のリアルなため息。私はそれをきっぱりと無視して保健室に向かう。 この態度は恥知らずかもしれない。素っ気ないかもしれない。でもそんなのどうでもいい。私はどうせ何をしたってダメな人なのだから。 私は無意識に自分が履いている制服のスカートの裾を手で強く握る。 私は自分のことをダメだと思うと、無意識にそういう行動をしている。その度になぜ私は今を生きているのだろう。ここに生まれてきたのだろうと疑問に思う。そしてそう思う自分がむしゃくしゃする。愚かで惨めな人だと。 階段を自分の教室がある三階から一階へ降りると、保健室に着いた。私は入り口の引き戸を開けて入る。 「失礼します」 「あら、清加ちゃんまたきっはたん?」 保健室の桜先生は方言混じりにそう言う。 ちなみにさっきの言葉の意味はまた来たの?ということ。たまによくわからない方言も使ってくるから関わりにくい奴なのかもしれない。実際、私もそう思ったことはある。けれど性格は優しいし、悩みも聞いてくれる。その上、具合が悪いと言ったらすぐベッドで寝かせてくれるからそこが桜先生の好きなところだ。 「受験生だからね、疲れることもあるよ。だから悩みがあるなら聞かせて。具合が悪いならベッドで寝ててもいいさね」 桜先生はコーヒーを飲み、一服をしながらそう言った。 「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて」 そう言って私はベッドで寝かせてもらうことにした。 幸い、ここで寝ているのは慣れているのか何も違和感は感じない。そのことが不思議に思うほどだ。 桜先生がベッドの近くにある肌色のカーテンを閉める。これが仕切りとなっていて外からはもちろん見えない。だから周りの目を気にすることなく寝かせてもらえるのだ。 私はその肌色のカーテンを見つめながらゆっくりと眠りについた。
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