第三章 何もなかったはず

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なのに…………。 その心を傷つけていたのは、私自身だったんだ。 「最初に言っただろ?いずれ壊れるって。清加はさ、ついさっき自殺しようとしていたろ?なら壊れたも当然だ」 確かに私は最初、いじめられているわけじゃないからそんなことないって受け流してた。 いずれわかるってこういことだったんだ。 自分でも傷つけて、他人からも傷つけられて、そりゃ自殺したくなるのも当然だよね。 私はそう思いながら埋めていた顔を上げた。そして美華吏の方を向く。 やはり彼は今にも泣きそうな顔をしている。 どうして…………? 「俺さ、他の人が辛そうにしているとこ見てたらいつもこうなるんだよな」 そう穏やかな口調で言って、制服のポケットからティッシュを取り出し、今にも溢れそうになっている涙を拭った。 もしかして、私のために泣いてるの? 私はまだ泣いてないのに、本当はどっちが辛い思いをしているのか、わからなくなってしまうじゃない。 そう思っていれば私の瞳からも雫が零れた。 やはり美華吏は優しすぎる。 めんどくさがりでいいところが何もない私とは、正反対すぎる。 その上繊細すぎて、そんな美華吏の前で私の本音を言うなんて、余計に辛くなる。 やっぱり…………。 何度私が自殺しようとしたって彼はまた、私の腕を掴んで助けようとする。私がしようとした行動は無駄なんだって。 そう確信したはずなのに私はまた、自殺しようと座り込んでいたその場から立ち上がった。 「待てよ。そうやってさ、自分を犠牲にしないでくれよ。やっぱり清加って俺と似てるな」 美華吏はそう言って私に笑いかけた。 美華吏と私が似ている? いや、そんなわけない。 私はただやらされているだけの運動も勉強もみんなの平均近く。めんどくさがりな性格のせいで母に怒られてばかり。おまけに今は友達からもまるで裏切られたかのように仲間はずしにされてるし、鞄や上履きは佳奈達に捨てられるばかり。 それに対して美華吏はバレーが得意で前に聞いた話だけど勉強は数学以外は得意らしくてその上誰にでも優しく接することができる。その心は繊細すぎて優しすぎる。 そんな私達が似ているわけない。 「どういうこと?」 「俺さ、父さんに優しすぎるって言われたことがあるんだ。それと同じで清加も優しすぎるんだよ」
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