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いけない
翌日。
朝、少しだけ軽く感じる瞼を開けば、ザァザァという雨の音が聞こえてきた。
ちょっと軽くなった体を起こして、緑色のカーテンを開ける。窓には大小様々なたくさんの水滴がついていた。
その水滴はどれもきれいで、まるでこの世界の美しさを表しているよう。
私は久しぶりに自然な笑みを浮かべた。
「おはよー、清加」
母がそう言って私の部屋に入ってくる。
珍しいことだけど、私のことを思ってやってくれたのだろうなと思いながら、私は挨拶を返した。
「今日はねー清加の大好物出してあげるからたまには朝食ぐらい食べなさいよ」
そう言って母は私の部屋を出ていった。
私の大好物はからあげだ。いつもレモンの汁を上にかけて食べている。
さっぱり柔らかな鶏ささみで作っていて、脂濃さとレモン汁の甘酸っぱさが上手く絡み合っていて、抜群のおいしさだ。
そのおかげで久しぶりにごはんが喉を通った。
空っぽだった腹がからあげによって満たされていく。
「いつ食べても最高だよ。母さん天才!」
おおげさだけど私はにっこり笑って母を誉めた称えた。
このからあげを食べたのもいつぶりだろうか。私はそれに懐かしさを覚えた。
母は私の言葉を聞いて、優しい笑みを浮かべた。
「辛くなったらいつでも言ってね。自殺なんてごめんよ」
そうだ。自殺しようとしていた私がバカだった。
私には怒られてばかりだけど、そんな私を育ててくれている母がいた。
こんな私にも優しくしてくれた、美華吏がいた。
大切な人を思って、そんなこと考えなければよかった。だけど長所を知れた。
幼なじみ以外の人とたくさん話ができた。
それだけで今は、この上なく幸せだ。
私はそれから食欲が増してきて、からあげを十個以上頬張ってしまった。
「清加。学校遅れるよ。それとも今日は休む?」
母にそう言われて私はふと時計を見る。それから大慌てで身支度をし、外に出た。
すると、
「おはよ、清加」
そう笑みを浮かべながら言った美華吏がいた。
鞄を肩にかけ、傘を手に持っていた。
私は思わぬことに目を丸くする。けれどすぐに理解した。昨日は屋上で話した後、一緒に家まで帰ったのだ。
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