いけない

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その日の休み時間。 私はいつも通り読書にひたっていた。 「ねぇねぇ、糸湊さん」 頭上から私の名字を呼ぶ声がして、私は誰だろうと顔を上げる。 顔を見れば瞬間的に寒気がした。 声の主はいつも私の鞄や上履きを盗んでいく佳奈だった。後ろにはつれもいる。 私は恐る恐る美華吏の席の方を見た。けれどそこにいるはずの姿はいなかった。 私は驚きながらも辺りを見渡す。 教室にもおらず、どうやら友達とどこかへ行ったようだ。 「昼休み、体育館倉庫へ来てくれない?私達、そこで待ってるから」 佳奈は上から目線な目つきをしてそう言った。それから私を一瞬睨みつけて離れていく。 私は硬直した。思いもよらぬ事態になって、思考が停止してしまったのだ。 何をされるんだろう。 そもそも佳奈達はどうして私の物を盗むのだろう。 恨まれるようなことをしてしまったのかな……。 いや、してないはず。私は今、美華吏としか関わっていないのだから。 授業開始のチャイムが鳴る。先生が入ってきたのを確認してから黙殺するように私は読書を始めた。 しかし、どうしたことだろうか。さっき佳奈にあんなことを言われてしまったからなのか、ものすごく寒気を感じて内容が頭に入ってこない。 私はため息をつきながら本を閉じ、空をただ眺めた。
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