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昼休み。私は震えている足を無理矢理動かして体育館倉庫へ向かった。
どうか、良からぬことが起きませんように。
そう雨があがったばかりの曇り空に祈りながら中へ入る。
「来たわね」
佳奈がそう言って私のところに近づいてきた。
つれもいてクスクスと笑っている。
足がガクガクと震えてやまない。
「ねぇ、どうして美華吏君から離れてくれないの?」
佳奈は怒ったような目付きで言った。
私は思いもよらぬ言葉にドキリとする。
嘘……。美華吏はまだこの学校に来てから一ヶ月しか経ってないのに、そんな彼を好きになっている人がいるなんて。
いや、まさかそんなわけないよね?
「私はね、美華吏君のことが好きなの!邪魔しないでくれる?」
佳奈はぶっきらぼうにそう言って私を睨み付ける。
自分がダメな人間だから、そのばちが当たったのかと今まで思ってた。でもそれは違うかったんだ。
しかし、あくまで私は恋愛見経験者。人を好きになる気持ちなどわかるわけがない。
とはいえ、美華吏が佳奈達の方へ行ってしまうのは、自分の友達が一人もいなくなってしまうのと同じことで、私は答えを出せずにいた。
佳奈が私の目の前に立ち、睨んでくる。
そしていきなり顔を叩かれた。頬がジンジンと痛む。
私は美華吏にただ頼まれたから数学を教えて、佳奈達に盗まれた鞄や上履きを探しだしてくれた。そして私の長所を見つけて教えてくれた。
そんな美華吏と離れなければいけないなんて嫌だ。
そう思った時だった。
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