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バタン!
背後から勢いよくドアを開けるような音が聞こえてきた。
途端にその方を振り返れば、息を切らしてながら立っている陽果と七生がいた。
どうして…………?
私とはもう、何も関係を持っていないはず。ただの元幼なじみ。
何をするつもり?
突然の出来事に頭は混乱して真っ白になっていく。
「いつまでも私達が、命令聞いてると思ったら大間違いよ」
陽果が怒ったような口調でそう言う。
命令?
何のことだろうかと私はきょとんとする。
「いじめなんかやったって無駄よ!いけないことだって授業で習わなかった?」
七生は相変わらず冷静で真面目な言葉を言い放った。
そのことで私を助けに来てくれたんだと理解し、顔がぱっと明るくなる。
「今度したらそんときには許さないから。ほら行くよ。清加」
陽果はそう言って私を手招きした。
私は訳もわからない中でも、とりあえずこの場をしのごうと、陽果と七生についていく。
「待って!」
背後から佳奈の声がして振り返る。
「許さなくていいけど謝らせて。ごめん!受験生だってのにこんなことやってる私達がバカだった」
佳奈はそう言って頭を下げる。続くようにつれも頭を下げた。
確かに佳奈達が私にしてきたことは、最悪とも言っても過言ではない。
人の物を盗むなんて成人してたら逮捕されててもおかしくはない。それも捨てられている場所がいつもゴミ箱だし、本当に常識はずれだと思う。けれどこんなことが起きなければ私は自殺しようとはしなかった。
つまり自分の長所に気づかないままだった。母も私を慰めてくれたりはしなかった。だから変な話かもしれないけど、今ではいじめられてよかったと思う。
これからの私にいじめは必要ない。
結局夢もやりたいことも見つかってないし、何をやってもダメなめんどくさがりな私だけど、長所を見つけれた。それだけで今はこの上なく幸せだ。
それにこんな日々はもううんざりだ。
「許すよ。受験、頑張ろうね」
嘘。私が受験勉強なんか頑張るわけがない。けれど今はこの言葉が一番ぴったりな答えだと思う。
陽果と七生は体育館倉庫を出る。私も続くようにそこをあとにした。
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