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第四章 空白
____時は五年前に遡る。
夏の風物詩でもある蝉の鳴き声がけたたましく響いていたある日、私は今日も眩しい日差しで目を覚ました。
のびをしてからベッドを出て、大急ぎで一階へ降りる。
早く朝食を作らなくちゃ。
そう思いながら私はリビングに行き、キッチンに立つ。
私は小三の夏頃から母に料理を教えてもらっていた。最初は不慣れな手つきで一品作り終えるにも一苦労だった。
特に揚げ物や蒸し物の料理は難しく、苦戦して失敗したことも何度かあった。けれど今では手慣れた手つきになり、一品作り終えるのもなんの苦労もなく、揚げ物や蒸し物は失敗することがなくなっている。
朝食のメニューはいつも一緒だ。レタスやきゅうり、ブロッコリーやトマトをマヨネーズで和えて作ったサラダ。あとトーストした食パンと目玉焼き。ぱぱっと二人分を作り終えると、テーブルの上に並べた。
「おはよー、清加。お!今日もできてるね」
母が嬉しそうにリビングに入ってくる。
私はこの頃には既に家事が何でもできていた。料理はもちろん、掃除や洗濯など母よりも優秀で理想の娘だって褒められることもあった。
「ねぇねぇ今度はさ、車を洗ってみない?」
トマトを頬張りながら母が提案してきた。
やったことはないものだ。でもこれまでもいろいろ挑戦してきて、結局はできるようになっていた。だから今回も大丈夫だろう。
「うん!やってみる」
そう元気そうに返事をしながら時計を見る。
それから私は少し急いだ気持ちで朝食を食べ終え、彩り豊かな弁当を作り、身支度をして家を出た。
空は快晴。太陽は眩しいほどに照らされていて気温も真夏日のように暑い。時々タオルで汗を拭いながら通学路を歩く。
しばらくすると、後ろから走ってくるような足音が聞こえた。
「よいしょっと!おっはよー!清加」
そうやって元気よく私の隣に来たのは陽果だ。今日もロングの髪を風にひらひらとなびかせている。
「ちょと待ってよー、陽果。あ!おはよ、清加」
七生は息を切らしながらそう言った。
私は二人の様子を見て、相変わらずだなと笑みを浮かべる。
「ちょっとさー算数の宿題、後で見せてよ」
陽果がねだるように言う。
きっとやるの忘れたんだろうな。よくあることだから。
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