第一章 私は私が大嫌い

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「おかえり。清加」 ポニーテールで赤淵メガネをかけた小柄な坂道七生(さかみちなない)は穏やかな口調でそう言いながら私の前の席に座る。 「相変わらずだね。清加」 ロングで童顔な希里陽果(きりはるか)は笑いながらそう言って私の隣の席に座る。 この二人は私の小学校の頃からの幼なじみ。七生は真面目でいつもテストでは百点が当たり前だ。一方、陽果は天然。そのおかげなのかクラスではちょっとした人気者だ。 「サボりマンなんてよく呼ぶね。浜崎先生」 陽果はまた笑いながら言った。 私はわかるわかると言うように頷く。 そのわりにはサボりマンというネーミングセンスが心底、私にはぴったりだと思ってしまう。 「ほんとほんと。おかげで嫌気がさしたわ」 七生は私の机の上に昼食を広げながら困った顔で言う。 その様子を見て陽果も昼食を広げ始めた。 「そういえばさ、清加のお弁当っていつもカラフルだよね。いい意味で」 陽果はいい感じに焼き色がついた卵焼きを口に頬張りながら言った。 私の母はおしゃれ好きで何でも彩りがないと納得しない人だ。だからこのお弁当もベーコン入りの生春巻やブロッコリー、スクランブルエッグやなすの味噌漬けというカラフルな組み合わせだ。それがいつも私の食欲をこれほどまでかとそそる。おかげで残したことは一度もない。 「そうかな?母が作ったんだけど」 「嘘?おしゃれすぎじゃない?憧れるわー」 七生は興奮したような口調でそう言った。 私にはこの彩りに慣れてすぎてしまっているのか、憧れる意味がわからなかった。 そのあともワイワイといろんな話をしながら昼食を食べた。
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